「文系からITエンジニアに転職して年収一千万!」という広告を見たことがありますか?
嘘はついていません、中にはそうなる方もいるでしょう。でも、それは「プロアスリートになれば年俸132億!」と言ってるようなもの。こちらの再現性は80億(世界人口)分の1くらいでしょうか。
とはいえ、ITエンジニアとして年収一千万を目指すことは、まだ現実的な目標です。
キラキラした広告を横目に、これから社会に出ようとしている15歳から20歳のみなさんの中には、「ITエンジニアを目指したい!」と感じている方もいることでしょう。
しかし、ITエンジニアになるのは決して簡単なことではありません。特に最近のプログラミング言語は複雑で、初心者にとっては高いハードルとなっています。あまりに高いハードルがやる気を削ぎ、結果として精神的な負担を増してしまうこともあります。(※1)
そこで、「若年層でITエンジニア目指したいんだけど10年後無双するにはどのルートが最適か?」というラノベタイトルのような、ちょっとしたコツをお伝えできればと思います。
申し遅れました、私は八木良仁と申します。プログラミング歴40年、IT業界に25年以上関わっている、いわゆるインターネット老人会界隈の住人です。現在はハバス合同会社にてAIエンジニアとして活動しています。昨年(2023年)までSI企業で働いていましたが、会社を辞め、次のキャリアを模索している時期に、コンピュータ専門学校で非常勤講師をしていました。
私が担当したクラスには、キーボードを初めて触る生徒から、休み時間にバリバリとコードを書いている生徒まで、幅広いレベルの学生がいました。結果的には初心者にターゲットを絞って教えましたが、オブジェクト指向の概念や基本的なアルゴリズムは、やはり初心者にとっては難しすぎるものでした。
ITエンジニアは知識労働者です、知識は基礎からの積み上げ、下から積んでいかないとグラグラで弱い。知識を得るために専門書を読もうとしても、出てくる言葉の意味や、ある程度の背景知識が無いと理解できない。だから「インターネットという情報があるから勉強しなくていい」とはいかない、インターネットは情報であって知識ではないから。知識の上に次の知識が積み上がる。
早い段階でプログラミングによる成功体験を得た人、「休み時間にバリバリとコードを書いている生徒」はもう勝ちルートに居ます。あとは、ウサギとカメのウサギにならなければ大丈夫。(※2)
ここから先の情報は必要ありません、この画面はそっと閉じてください。
さて、画面を閉じなかった「あなた」。
あなたは、おそらく「キーボードを初めて触る子」か、もしくはそちらに近い人だと思います。
現代のプログラミング言語は多機能で、情報量が膨大です。すべてを学ぶのは容易ではありませんし、こんなに詰め込んでたらノイローゼになっちゃう。そのため、最初の入口はできるだけハードルを低く設定し、少しずつ知識を積み上げていくことが重要です。低いハードルから入り、収入を得ながら日々の学習を積み上げ、10年後に無双する。そんなルート・・・
それは COBOL です。
さてみなさん、COBOLって聞いたことありますか?オワコン?枯れた言語?昭和の遺産?特に若い世代では、今さら感が強いでしょう。
衰退している言語を勉強しても将来が不安ですか?例えばスマホアプリを開発したくて Flutter+Dartを習得したとします。おそらく5年もすれば、開発環境は大きく変わっています。Flutterで今後10年戦える。そう思っているFlutterエンジニアはほとんどいません。
つまり、最新の開発言語を習得していても、大して変わらないという事です。IT業界では、その時その時の状況に合わせて次々と学習していく、そういうスタイルが求められます。ならば、COBOLも入口の言語として最適ではないでしょうか。
COBOLは現在でも多くの企業で使用されており、求人もあります。COBOLであっても、基本的なIT知識は必要ですし、実際の業務を通じて基礎的なITスキルを磨くことができます。
COBOLを入り口にしてITエンジニアのキャリアをスタートさせ、業務の中で基礎知識を磨きつつ、趣味として他の言語にも触れていく。それが10年後に無双するためのルートです。ただし、このルートには一つだけ注意点があります。COBOLはどうしても従来型IT人材になります(※3)、先端型IT人材での無双を目指している事は決して忘れないでください。居心地がいいと努力することを忘れてしまいがちですから。
※1
「ITエンジニアのメンタルヘルスに関するアンケート」
https://xtech.nikkei.com/it/article/COLUMN/20071009/284092/
※2
イソップ寓話「ウサギとカメ」の教訓の一つ「最後まで怠けるべきではない」におけるウサギ。
他に「コツコツ積み上げた者が勝つ」「真に才能ある者は努力する者に勝利を譲る」「努力できるウサギだったらとっくに次のゴールを目指して旅立ってたよ」など様々な教訓がある。
※3
2030年試算で、先端型IT人材は不足しますが、従来型IT人材は過剰供給傾向にあります。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf#page=39